2018-01-17 ようやっと調査再開

 朝一で工務所に向かうアシスタントとドライバーを見送り、桟橋に調査用品を運び出して船の到着を待ちます。出発時刻が10時前と普段より1時間以上遅れてしまいましたが、Kilimo Islandは近場なので十分挽回できます。到着した船に荷物を積み込み、スタッフも全員乗り込むと、明らかに前回より喫水線が低くなっています。グラスボートはグラスファイバーを樹脂で塗り固めて作られていますが、底の樹脂が磨滅して水が船底の中空の部位に染み込んでいたようです。同じ積荷でもスピードが出ますし燃費も良くなるはず。船外機のハンドルを握るMohamed氏も満足げです。
 船を10分も走らせると、早くも小さな岩だらけの島が見えてきました。目当てのKilimo Islandです。前回調査したNyegezi Rockからは1㎞しか離れていませんが、シクリッドの種構成が幾分異なり、高い地域固有性と種多様性が伺い知れます。今回は、前回の調査で見つかった改善点のチェックと、シクリッドの1種Astatoreochromis alluaudiの採集が主目的です。また、Mwanza Gulf内ではあまり見られませんが本地点では例外的に多数確認されるHaplochromis chilotesの採集も目論んでいます。
 島に到着し、水温や透明度など一通りの測定をこなした後に早速網入れ。前回、タグガンの故障で時間を取られ質の良い写真を撮れなかった事と今回の調査開始時刻が遅れたたことを鑑み、今回は落とす網を1枚減らし、網揚げの時間も早めて「量より質」のサンプリングを目指します。また、今回から同行研究員がMrosso氏から新人研究員Kashindye氏にバトンタッチになったため、彼のトレーニングも兼ねています。


 網入れから1時間後、シクリッドの入ったバケツが戻ってきました。思ったよりかなり少なめですが、その分みな元気でバケツの中を泳ぎ回っています。取り上げて写真撮影用のキュベットに入れると、網の擦れ傷も少なく大変良い状態。Kashindye氏にサンプリングの方法を軽くレクチャーしつつ、写真撮影とタグ付けを進めていきます。

 Kashindye氏の飲み込みも良く、あっさり作業が終了したため、日暮れまでかなり時間を残してサンプリング終了。残った時間がちょっと勿体ないな、と思ったので、私がラボで標本整理している間に、残りのスタッフはTAFIRI桟橋から目の鼻の先にあるアシ帯でもう一網入れてもらうことにしました。ここは小さな川の河口で、こういった場所に目当ての種が潜んでいる可能性が高いのです。

 スタッフを見送り、ラボで採集したシクリッドのDNAサンプルを採集していると、1時間半ほどしてスタッフが意気揚々と帰ってきました。「Soga、Wengi(いっぱい)!」差し出されたバケツの中には、現地名でSogaと呼ばれる銀色の魚が泳いでいました。今回の採集目的の1種、アフリカカラシン(Brycinus)です。DNAサンプル採集を中断して急ぎ撮影開始。一気に20個体も集まり、本種の目標個体数にあっさり到達しました。ギリギリだと心もとないのであと10個体ほど欲しいですが、TAFIRIの目と鼻の先でこれだけ魚影の濃いポイントがるなら問題ないでしょう。今日は採集個体数が少ないからホルマリン固定まで一気にやってしまおうと思っていたのですが、一気に忙しくなり結局作業は明日に持ち越されました。

2018-01-18 買い出し