2018-01-13 標本作業、ボート修理

 今日は、昨日採集したシクリッドの標本作成作業です。同時に、ボートの修理のため技師を呼んで見積もりを取ってもらいます。技師とMhoja氏が連れ添って桟橋に向かうのを見送ったあとで、作業開始。
 まず、マイクロチューブを標本の数だけ並べ、その中に耐水紙に標本番号を書き込んだ小さな短冊を1枚ずつ投入し、中を99.5%エタノールで満たします。次に、クーラーボックスから氷漬けのシクリッドを取り出し、タグの標本番号順に並べます。フィールドノートと照らし合わせながら抜けがないか確認し、同時に暫定の種同定を行います。

 並べ終えたら、魚体の右側面(魚の顔を正面から見た場合の左側)から胸鰭(むなびれ)と腹鰭(はらびれ)をハサミで切り取り、マイクロチューブに投入します。99.5%エタノールで脱水されたひれの標本は、日本に持ち帰ってDNA抽出を行います。以前の調査では、コンタミ(サンプルに別個体由来のDNAが混ざること)を回避するために皮下の筋肉を切り出して保存し、1個体ごとにメスの替え刃を使い捨てるという大変手間のかかる方法を用いており、ものすごく時間と労力を要する作業だったのですが、経験則よりさほどコンタミに気を使わなくても大丈夫(微量のコンタミがあっても解析に影響はない)という事が判ったため、現在の方法に落ち着いています。

 ひれの標本を採り終えたらマイクロチューブを片付け、魚体をホルマリンで固定していきます。死んだ魚は体がよじれ、ひれが畳まれた状態である事が多いのですが、これをそのままホルマリンで固定するとよじれが二度ともどらず、各部位の正確な測定が大変困難になります。ホルマリンの中で魚体をほぐし、ひれを素早く引き伸ばして理想的な体勢に整えていきます。ホルマリンは劇薬で、揮発したものが目やのどに入り込み、大変しみます。本来はドラフトチャンバーの中で行うべき作業なのですが、TAFIRIにそんな装置はないので庭先で涙を流しながらの作業になります。当然ゴム手袋を付けての作業になりますが、シクリッドのひれは大変鋭く、手袋にすぐ穴が開いてホルマリンが内側にしみこみます。この作業を繰り返すと指先があかぎれの様にひび割れて、そこにホルマリンが染み込むと涙が出るほど痛いです。今回は、ゴム手袋をつける前に両手にワセリンを大量に塗りたくるという方法を試していますが、しっかり水をはじいておりなかなか良い感じです。もっとも、大型シクリッドの背びれが指に刺さる事もあり、これはどうやっても回避できないのですが……。

 100個体弱の標本を3時間かけて処理し、本日の作業は終了。午後は体を休めつつ伝票処理でも……と思ってたら、難しい顔をしたMhoja氏が戻ってきました。どうも、船底もけっこう傷んでるらしく、一度岡に上げて全修理した方が良いとの事。安全には替えられないのですぐ修理に出すよう依頼します。船がない間は調査ができないので、急いで修理に入るよう技師に頼みます。「ガレージに船持って行って、すぐに取り掛かるから大丈夫、月曜には使えるようになるよ!」と力強く請け負ってくれました。そして後日、「タンザニア人の『すぐ』は全くあてにならない」というかつての教訓を思い出すことになります……。
 何はともあれ、本日の作業はこれにて終了。明日は日曜で、日曜礼拝に熱心なタンザニア人はまず仕事に来ないので1日オフに充てます。お疲れさまでした。

2018-01-14 ゲストハウスで事務仕事