2018-01-12 調査開始!

 今日は調査初日です。昨日のうちにラボに並べておいた調査機材をボートに積み込み、指差し確認をしていざ出発。久しぶりの調査なので、どの機材にトラブルが起こってもおかしくありません。何かあったらすぐ戻れるよう、TAFIRIから目の届くNegezi内湾でまずはお試し調査です。フィールドワークの大ベテランであるMrosso研究員にも同行してもらいます。

 ボートでものの5分でたどり着くNyegezi湾の出口、通称Nyegezi Rockで調査開始。時刻と天候を確認した後に水温・水深・透明度・GPSなどを測定記録、刺網をセットする場所と網目を指示した後に網を落としながら水深を逐次連絡・記録……以前は流れ作業でこなしていた手続きも、いちいち思い出しながらだと手こずります。前調査時の倍くらい時間をかけて、何とか刺網の投下を完了。船のへりが削れてガサガサになっており、網が引っかかって破けてしまうので、これは明日修理に出す事にしました。

 近くの岩場に船を留めて標本撮影用の機材を展開し、シクリッド釣りを開始します。発色の良いシクリッドが釣れたら写真撮影とタグつけを行い、その他の釣果は彼らの晩御飯になります。網を引き揚げるまでの2時間ほどの間、釣り糸を垂れながら幾分のんびりした時間が訪れます(珍しいシクリッドが沢山釣れた場合は、嬉しい悲鳴を上げながら標本作業に忙殺されます)
 時間が来て、Mhoja・Mohamed氏は1枚目の網を回収するため再び湖へ。20分後、「Furu, nyngi! (シクリッド いっぱい!)」の声と共に魚の入ったバケツが陸揚げされました。さあ、ここからが忙しい。バケツの中から状態の良いシクリッドを選別し、体色が褪せないうちに写真を撮影します。シクリッドの識別形質の大半は成熟オスの鮮やかで多種多様な色彩なので、ここを逃すと種分類がほぼ不可能になってしまうのです。良い状態で体色が残されているのは網揚げ後30分足らず。この間にいかに手際よく写真撮影と標本タグを付けられるかが、標本の品質を決定します。
 さて、ここで問題発生。シクリッドの魚体に標本タグを縫い付けるタグガンという機器が正副共に不調で、何度試しても魚体にタグピンが刺さりません。単純な機械なのでその場で分解して修理を試みますが、数個体にタグ付けしたあとに再び故障。その間にもシクリッドの体色はどんどん褪せていきます。ものすごく焦ります。

 今回はこういった機材の不備をあぶり出すためのお試し調査なので想定内の出来事ではあるのですが、目の前のシクリッドをみすみす捨てるのは何とも勿体ない……そんな貧乏性が炸裂し、タグガンの針で魚体に穴をあけた後に手でタグピンを通すという力技で無理やりタグ付けを行いました。普段の調査なら捨ててしまう若干状態の悪い個体も拾い上げ、予定より2時間ほど時間を延期して何とか標本採集を終了。どれだけ慎重に準備をしても、現場でサンプルを見つけると我を失ってしまうのがフィールドワーカーの性です(だからこそ、準備は慎重に慎重を重ねる必要があります)。

 17時を回り、日が傾いた所で調査を切り上げ無事TAFIRIに帰還。調査機材をラボに収容し、船外機を回収したところでほぼ日が暮れたので調査終了。タグを付けた標本は氷を詰めたクーラーボックスに収納し、明日は組織標本の採集と標本固定作業です。

2018-01-13 標本作業、ボート修理