タンザニア・フィールドレポート2023 その10

ムワンザ2日目は少し遠出をしてムワンザ湾口東岸に位置するOld Iombeへ。広大なビクトリア湖の外洋に面し,ナイルパーチを主要な漁獲魚としており,水揚場の利用者は1000人に達するという,Sweyaとは様々な点で対照的な漁村です。Sweyaとは異なる漁業や生活スタイルがあり,それに伴う固有の問題があると思われます。これまでの昨日の内容を思い出しつつ,ヒアリングを開始しました。

一番の違いは,ナイルパーチを主要漁獲対象としているため,漁船や船団の規模が大きい事が挙げられます。ナイルパーチの漁場はダガーよりもさらに沖合であるため,大きな船で半日から一日かけて沖合に乗り出し,数日掛けて巨大なナイルパーチを漁獲します。大きなクーラーボックスに氷を積んだ母船が漁場に停泊し,周囲の漁船から魚を回収してはストックして,満載になるか氷が溶ける頃合いで村に帰還するそうです。時には4日間沖合で漁獲を続ける,大変な仕事です。当然漁船も大型になり,船外機も必須となります。ボートエンジンの燃費は自動車と比べると非常に悪く,1リットルで2-3㎞くらいしか進みません。また,ガソリン単価は日本よりも高く,それでいて物価は日本よりはるかに安いのですから,現地ではガソリンは高級品です。大きな漁船や高価なナイルパーチ用刺網を揃え,高価なガソリンを消費してまで漁に向かうのは,ナイルパーチがダガーより遥かに高値で売れるためです。ダガー漁と比べ何倍もの先行投資が必要ですがその分実入りも大きい,ハイリスクハイリターン型の漁業と言えます。成功した漁師は複数のボートを購入してオーナーとなり,漁師を雇用する立場になります。ボートオーナーと零細漁師の二極化が進みやすいのもナイルパーチ漁村の特徴と言えるかもしれません。

ナイルパーチの漁獲は年々減少しており,ともすれば大きな負債を抱えかねないナイルパーチ漁は縮小傾向にあります。近隣の漁村では,ナイルパーチ漁を諦めてダガー漁メインに転換した例もあるとか。過剰な漁獲を抑制し,数少ない漁獲物をより高価値で流通させるシステムが必要であると感じました。