タンザニア・フィールドレポート2023 その6

本日はタンザニアのマラウィ湖畔BMUとして最大規模のMatema村へ視察です。昨日から引き続き,TAFIRI Kyela支所のMbonde研究員とDistrict Fisheries OfficerのMchopa氏に帯同していただきました。

TAFIRI Kyelaを出発し,自動車で1時間ほど走った先にMatema村があります。マラウィ湖のほぼ北端に位置し,湖東部を構成する造山帯と西部の平野との境目に面しています。自動車でたどり着けるのはこの村までで,ここから南東の集落へはボートを使って移動せねばなりません。今回はボートで移動する時間および予算の余裕がなかったので,Matema村を対象としました。交通の便や水揚場の立地としては平野部が多い方が良いのですが,漁場としては深場にアクセスしやすい急峻な立地の方が適しています。両方の特性を併せ持つ本地域がタンザニア沿岸で最大規模のBMUを擁しているのは,地理学的な必然と言えるかもしれません。

到着した集落の名前はLyuliloと言います。ここにある水揚場はKafyofyoほど広大ではありませんが利用者の数は多く,結果として密度が非常に高くなっています。水揚場の後背地は山になっており,所々から炭焼きの煙が立ち上っています。水揚場に適した場所が少ないため,近隣の4つのBMU(Mkwajuni, Ibungu, Ikombe, Lyulilo)が本水揚場を共有しているとの事。ヴィクトリア湖沿岸のBMUでは見られない運営方式で,BMUの運営が立地や住民の特性に合わせて柔軟に対応している事が伺えます。BMU Lyuliloの構成員は約500名。うち半分が漁師や漁船のオーナーです。Kafyofyo同様,BMUの歴史は非常に新しく,2015年から本地への導入が計画されていましたが,正式にBMUとして登録されたのは2023年になってからとの事。つまり,できたてホヤホヤのシステムなわけです。Mchopa氏からこのような説明を受けている間に徐々に夜が明け,漁船が次々に岸に乗り上げてきました。昨日のKafyofyo同様,わっと仲買人が漁船に集まります。日干し場が少ない分,加工業者よりも仲買人の割合が多いようです。本水揚場までの舗装道は存在しないため,仲買人の大半はバイクで買付に来ていました。

仲買人の仕事とが一段落し,漁船を覆う人だかりが落ち着いたところでボートの中身を見せて貰いました。どうやら,漁獲物はKafyofyoと大差なさそうです。ただし,Dagaaのサイズは一回り二回り大きい個体が多く見られました。深場ほどDagaaのサイズが大きくなる傾向があるとの事で,造山帯に面して急峻な地形となっているLyuliloの方が良い漁場にアクセスしやすいのが影響しているようです。

一通り写真を撮った後,BMU事務所に移動してインタビュー開始。Kafyofyo同様,人口増にともなう水産物の需要増と年々進む漁獲量低下が深刻な問題との事でした。しかしながら,BMUという新しいシステムを導入した本地域の漁業は様々な課題が解決され上手く運営されている,という自負も垣間見えました。