今日は,シノドンティス狙いで2回目のShadi遠征です。前回の調査では2個体しか採集できなかったのですが,その理由には心当たりがありました。シノドンティスは夜行性のものが多いので,日が昇ってからは植生帯や岩の隙間に潜り込んでじっとしている可能性が高いのです。日没後が狙い目のはず,と思いMhojaと相談しました。深夜の調査はちょっと危険という事で,早朝に出発し夜明け直前に刺網を入れる事にしました。
当日集合は早朝4時半。真っ暗な夜道を歩いて船着き場に辿り着きます。ハンドライトと自動車のヘッドライトを頼りに急いで準備を済ませ,いざShadiへ。月明かりも無い深夜の湖に船外機と水しぶきの音が響きます。私の目では正真正銘の暗闇なのですが,Mhojaが的確に指示を出しボートの進路をコントールします。タンザニア漁師の視力は驚くほど鋭く,この暗闇でも地形が見えているようです。
1時間ほどボートを走らせ,無事Shadiに到着。夜が明けるまで30分ほどしかありません,ヘッドライトで手元を照らしながら慌ただしく刺網の準備を進めます。地形が見えないため,Mhojaに「Gogogo(シノドンティスの現地名)がいそうな所適当に網入れて!」と大雑把な指示を出し,日が昇りきる前に何とか4枚の刺網を投入できました。
その後,地元の漁師を探して周囲を探索。「Gogogoはいないか,いれば買うよ!」と声を掛けて回り,5槽目の船で当たりを引きました。刺網に絡んだ大量のシノドンティスを発見して「これ,これ頂戴!」と言うと大笑いしながら交渉に応じてくれました(お金になる魚はナイルパーチとナイルティラピアで,他の魚はいわゆる“雑魚”扱いです)。
バケツ一杯のシノドンティスを購入し,これで最低限の個体は確保できたな,と安心して刺網の回収に向かいました。するとこちらでもシノドンティスが鈴なりに。しかも,漁師から買った種とは別種のシノドンティスです。大はしゃぎで回収し,写真撮影とタグ付けに入ります。混獲物のシクリッドも回収し,意気揚々と帰還しました。
眠そうなMhoja,Mohammed氏を帰し,急ぎ標本作業に。数百種も生息するシクリッドと異なり,湖産のシノドンティスは2種しかいません。体色の微妙な違いで種を判別する必要が無いので,全個体の写真を撮る必要はありません。数個体の写真撮影を済ませ,DNA解析用サンプルを採集してさっさと処理を済ませました。
そのまま眠ってしまいたいところですが,今日はもう一仕事。午後はLake Malimbeの下調べに向かいます。明後日の調査の前に,ゴムボートを持ち込むための通路整備をしなければなりません。この湖の周囲は全てパピルスやアシの密生した沼沢地になっており,下草を刈って通路を作る必要があります。現場到着後,地元農民を捕まえて交渉開始。謝金を支払って,草刈りと当日の荷物運搬を依頼します。スワヒリ語が心もとないので,交渉はすべてMakoye氏に一任です。2名に2日間,計5万シリングで働いて貰う事になりました。「少し高かったかな?」とMakoyeが笑っていましたが,外国人価格という事で許容範囲内です。「明日様子を見に来るよ,草刈できてたら半額払うからね」と約束してお別れ。ラボに戻って,残りの標本処理を済ませます。
何だかんだと作業があり,全て終了したのは18時過ぎ。夕食をかきこんだ後シャワーも浴びずに就寝しました。お疲れさまでした。
2018-01-25 Malimbe遠征準備など